「ば、ばかな・・・魔力をダガーで斬るなど・・・」

驚きを隠せないデンパ

スミレがすかさずダガーをデンパに向ける

「くっ!!」

デンパが横に跳ぶ

しかし突きのスピードが速すぎた為、完全回避にはいたらない

ズシュッ!

左肩を負傷するデンパ

「ちぃっ!!この女!!」

すかさず体勢を立て直し、氷の刃を飛ばすデンパ

しかしそこにいるはずだったスミレの姿はなかった

「どこにいった!?」

デンパがスミレの姿を探す

そしてすぐさま宙に飛ぶ

デンパの下ではスミレがダガーを突き出していた

そのまま空中で回転して着地するデンパ


「さすが、大盗賊神崎スミレといったところだな・・・」


デンパが汗を垂らしながら言う

「ス、スミレさん・・・まさか記憶がもどったのか・・・?」

自らの傷の治療をしながらポイニクスがスミレを見る

「だが、こんなところでやられるわけにはいかん!」

デンパが詠唱を始める

「この地に宿る氷の精よ!かのものに深く冷たい刃を突きつけよ!」

スミレの足元の大地の温度が急激に下がっていく

「アイスセイバー!!」




アイスセイバー
対象の地面から巨大な氷の塊を出現させる上位魔法
気づいたときにはすでに地面が凍りついており、脱出不能となる





地面から巨大な氷が姿を現す

そして、一瞬のうちになにも見えなくなるくらいに氷塊が次々と姿を現す

「やったか・・・?」

周りに現れていた霧が晴れていく

霧が晴れていくと同時にデンパの前方の霧がなにかに振り払われるように姿を消した



そこに現れるは銀髪の盗賊



すさまじいスピードでデンパに突進するスミレの姿があった

スミレのダガーがデンパに突き刺さろうとする瞬間

デンパが魔法のシールドを張る

ギィィィンッ!と金属音が鳴り響き後方に弾き飛ばされるスミレ

吹き飛ばされながら一度宙返りをし、着地するやすぐに突進を開始する

「実際に手合わせをするのは始めてだが、あの女神に選定されていないものがここまでの力をもっているとは・・・!!」

デンパが言う

「盗賊相手に正攻法では危険か・・・」

デンパがつぶやく

スミレが体を左右に揺らしながらデンパに向かっていく

体の揺らしが早すぎるのか、デンパにはスミレが二人に見えていた

「これは・・・まずいな」

デンパが空中に身を投げ出す

そのままデンパは空中で止まってしまった

「むっ!?」

デンパが何かに気がつく

スミレが上を見上げる

「はっはっは!さすがは神崎スミレといったところか!」

「だが、次に会ったときは容赦はせん。覚えておくんだな!!」

デンパがスミレに言い放つ

「じゃあな。遅れてきた女神様」

そう言い放った瞬間、蒼白の鎧を身にまとった美しい女神が姿を現した

「デンパ・・・貴様!!」

「おっと、この状況でやりあっても勝算がないんでな。失礼させてもらうよ、ヴァルキリー」

デンパが五芒星を描く

その瞬間赤い光がデンパを包み込む

光が姿を消すと、デンパも姿を消していた

「あの魔法は・・・」

ヴァルキリーが驚いた表情を見せる

「ヴァルキリー様・・・」

ポイニクスが自らの傷を癒し終え、ヴァルキリーに歩みよる

「ポイニクス、なぜ単独行動をした?」

ヴァルキリーが言い放つ

「すいません・・・理由はまだ・・・」

ポイニクスが申し訳なさそうに言う

「・・・そうか。お前が言いたくないのであればそれもいいだろう。」

「ただし、単独行動を許せるのは今回で最後だ。」

「・・・はい。わかっています」

「そうだよ、単独は危険よ」

ヴァルキリーの横に立っているヨネが言う

「ポイらしくないなぁ。冷静なだけがとりえなのに、とりえがなくなるぞ?」

苦笑するポイニクス




しかし、次の瞬間

同じ銀髪の女がヴァルキリーに襲い掛かった

ずかさず剣を構えるヴァルキリー

「ポイニクス!何者かは知らんが応戦するぞ!」

「ま、まってください!!」

ポイニクスが叫ぶ

「何を言っている!?あの者の動き、かなりのものだ。応戦しなければこちらが危ない!正気か?ポイニクス!!」

「そうそう、やらなきゃやられる!!」

ヨネも詠唱を始める

「私にまかせてください!」

ポイニクスが言う

「スミレさん!!思い出してください!私です!ポイニクスです!!」

スミレにむかって叫ぶポイニクス



するとスミレの動きが止まった

「う・・・あ・・・・」

突如苦しみだすスミレ

「一体どうしたというのだ」

「ポイ、何したの!?」

「スミレさんは記憶を失っているのです。・・・私のせいで」

うつむきながらポイニクスはいう

「う・・・あああ・・・・」

「スミレさん!!」

叫ぶポイニクス

「あ・・・ああああああああああああああああああああ!!!!!」

スミレは苦しみながら森に向かって走り出した

「スミレさん!!」

追いかけようとするポイニクス

「それはならん」

ポイニクスの前に立ちはだかるヴァルキリー

「我々には成さねばならぬことがあるはずだ。それを忘れたか?ポイニクス」

「・・・いえ。」

「ならば、行くぞ。早急に解決せねばならん」

「元気だしなよ、ポイ。あたしがいるじゃん!」

ヨネが元気に言う

「・・・すいません。今は一人にしてもらえませんか?」

「がーん・・・マジストレートダナ・・・」

「いくぞ」

まばゆい光と共に、3人は姿を消した