「ふふ・・・強くなったわね」

笑いながら話すフェイミィ

「なぜ貴方が・・・!?あの時たしかに!」

「ライト君・・・この世界には人間には想像もできないようなことがたくさんあるの」

「だから目の前で起こっていることが全てなのよ」

両手を広げながら言う

「こっちにいらっしゃいライト君。貴方には才能があるわ」

「えっ・・?」

困惑するライト

「今はね、ちょっとした理由でこんなことをしているけれど、早く終わらせて道場に帰るつもり。だから、手伝ってくれないかな?」

「フェイミィさんが困ってるのを助けない訳ないじゃないですか!」

歩み寄ろうとするライト

「まった」

ライトの前に手を伸ばし、静止させるふぎん

「ライト君、君は本当にあの人をフェイミィさんだと思うのかい?」

「な、何いってるんですか!?正真正銘、フェイミィさんじゃないですか!!」

ふうと息を出すふぎん

「ライト君。君の知ってるフェイミィさんはあんなに禍禍しい気を放ったいたかい?」

「良く感じて見るんだ。気を感じろと教えてくれたのはフェイミィさんなはずだ」

ライトが心を落ち着かせる

そして再度フェイミィを見る

そこには明らかに闇の者と思われるほど強大な気を放っているフェイミィの姿があった

「あ・・・・ああ・・・」

震えだすライト

「気づいたようだね」

「あんなに澄みきっていたフェイミィさんの気が・・・!」

「ふふ・・残念。ライト君、知らないほうがいいこともあるって知らないかな?」

そう言って構えをとるフェイミィ

「くるぞ!!」

ふぎんが合図をかける











しかし

「む、無理だ・・・」

アカハナが手に持っていた剣を床に音を立てて落とした

「あのすさまじく強かった戦士さんでさえあんなに簡単にやられたんだぞ!?」

震えがとまらないアカハナ

「アカハナ!何やってるんだ!何もしないでやられるつもりか!?」

聖騎士が問いかける

「お前も見ただろうが!!あんなに硬そうな鎧が一瞬で、しかも素手でだぞ!?」

「わかってる!けど、このまま何もしないで終わるのか!?」

「まてまて二人とも!」

ふぎんが間にはいる

「今はこの状況をなんとかしないといけない。内輪もめしてる場合じゃないだろう!」

「・・・すいません。」

謝る聖騎士

「ふ〜くん」

後ろから前方を警戒しながら小声で風結びが声をかける

「どうするつもり?勝てる確立はほとんど0よ・・・?」

「風ちゃん、ウィザードゲートの詠唱を始めてくれ。」

「でも、ウィザードゲートの詠唱には3分はかかるのよ!?それまで持つの!?」

「大丈夫、なんとかなるさ」

言い切るふぎん

「・・・わかった。ふ〜くんを信じるよ」

そういって詠唱を開始する風結び

「ふぎんさん」

「ん?」

声をかけたのはヘルサスだった

「もしかしたら倒せるかもしれないよ・・・」

「なんだって!?何か手があるっていうのかい?」

「いちかばちかだけどね・・・あたしを信じてくれる?」

緊迫した雰囲気で話すヘルサス

「・・・わかった。さっきのヘルさんを見てたし、何とかしてくれることを期待するよ」

「ありがと、詠唱は2分弱。それまでなんとか耐えてくれる?」

「またきついこと言うよなぁ」

苦笑いするふぎん

「ふふふ・・・そろそろお話は終わり?」

フェイミィが待ちくたびれたように話す

(待っていてくれるとは・・・その油断につけこめれば・・・!)

「ライト君、やれるな?」

「・・・はい。もう、後悔はしたくありませんから」

(成長したな・・・ライト君)

OK。なんとか時間を稼いでくれ。無茶なのは承知の上でだけどね」

ふぎんが再びフェイミィの方を向く

「ライト君、聖騎士君、アカハナ君!いくぞ!!」

「それじゃあ、はじめましょうか」

両方が戦闘態勢をとる

「アカハナ君!聖騎士君!まずふたりで仕掛けてくれ!」

「了解です!」

飛び出す聖騎士

しかしアカハナの姿がない

アカハナはまだふぎんの横で棒立ちになっていた

「アカハナ!なにやってんだ!」

前に飛び出しながら後ろを向く聖騎士

「む、無理だって・・・」

立ち尽くすアカハナ

「ばかやろう!お前がこなかったら・・・」

「あらあら、戦闘中によそ見する余裕があるのね」

瞬時に聖騎士の前に姿を現すフェイミィ

「しまっ・・・」

フェイミィの回し蹴りが聖騎士を直撃する

そのまま大きく横方向に吹き飛ぶ

「一人。」






「うおおおおお!!」

ライトが右脚を大きく振り上げる

それをフェイミィも右脚で受け止める

両者の頭上で脚が交差する

「フェイミィさん!!」

「ライト君、もうちょっと腕を上げてくるべきだったわね」

フェイミィが地面と平行に脚を出す

それを腕で防ぐライト

「さぁ、どこまで防げるのかな!」

始めはライトにも見えた蹴りがどんどん早くなっていく

「くっ・・・は、はやい・・!」

目で追えないくらいフェイミィの蹴りが早くなる

ライトはぎりぎりのところで直撃を防いでいた

「お疲れ様」

ゴッ!!という音と共にライトが意識を失う

フェイミィのかかとがいつのまにかライトの脳天を直撃していたのだ

「二人。」

そう言ってどんどんふぎんに近づいていく

「ま、まさか30秒も持たないとはね・・・」

「だ、だからいったんだよ・・・力が違いすぎる・・・」

アカハナが震える声で言う

「ふふ・・・貴方は向かってこないのね。懸命な判断だわ」

ぽんっとアカハナの肩に手を置くフェイミィ

「さぁ、もういいかしら?」

「まだうちが残ってる!風ちゃんには指一本触れさせないさ!」

「あはは、何いってるの?貴方は最後なのに」

ふっと姿を消すフェイミィ

「しまった!!風ちゃん!!」

ふぎんが風結びに駆け寄る

「残念だったわね」

風結びの背後に姿を現すフェイミィ

詠唱に集中している風結びはまったく気がついていない

「風ちゃん!!」

ふぎんがさけぶ

フェイミィが手刀を首に振り下ろす









風結びの首とフェイミィの手刀の間をダガーがさえぎった

「風さんはやらせません!」

「遅れてすまないね!」

そこにはスミレ達の姿があった

「スミレさん!マリーネさん!」

ふぎんが安堵の表情を浮かべる

「話は表のメタス君から聞いたよ!」

「私も加勢させていただきますよ」

詩琉が前にでる

「あなたは・・・?」

「話はあと、まずはここを抜けてからです」

そういってハープを奏でる詩琉

その場全員の体から力があふれてくる








オールライズアビリティ

対象の能力全てを強化する吟遊詩人独特の魔法

しかし、吟遊詩人自らの高い魔力と楽器を使いこなせないと習得できない高度な魔法である






「うおおおお!?」

ふぎんが自らのあふれてくる力に驚く

「こ、これならいけるかもしれない!」

詠唱をしている二人は気がついていなかったが詩琉のおかげで大幅に詠唱速度が上昇していた

「あらら・・・まだ仲間がいたのね」

ふう・・とため息をつくフェイミィ

「そろそろウィザードゲートの詠唱も終わる頃だろうし、本気でいくかな」

(・・・!!?あの者は!!)

詩琉が何かに気がつく

「スミレちゃん!」

「はぁあああ!!」

詩琉の力により強化された二人がフェイミィに襲い掛かる

「あの動きで左右同時攻撃!さすがのフェイミィさんでも・・・!」

ふぎんが言う

「はっ!!」

フェイミィが掛け声と共に両手を広げた

その姿は大の字のごとく

フェイミィが触れてもいないのに襲い掛かろうとしていたスミレとマリーネが吹き飛ぶ

「きゃああああ!」

「な、なんだいこれ・・・!?」

フェイミィの放ったのは紛れもなく拳圧だけで放った衝撃波だった

「そ、そんなばかな!?拳圧だけで人間が吹き飛ぶはずがない!!」

ふぎんが信じられないものを目の当たりにする

「さて・・・ん?」











「!?」

フェイミィが突如険しい顔つきになる

「こ、この詠唱言語は・・・こ、古代ルーン語!?」

そう

その詠唱をしていたのはヘルサスだった

「これは本当に遊んでいる場合じゃないわね・・・!!」

すさまじい移動術で一瞬にして距離をつめていくフェイミィ

ヘルサスの詠唱も最終段階まできていた

フェイミィとヘルサスの間に突如立ちふさがる影がひとつ

「やらせませんよ。かつての四勇士、フェイミィさん!」

「なぜその名を・・・!?今はどうでもいい!どきなさい!」

フェイミィが体を反転させ後ろ回し蹴りを詩琉に叩き込む

それをフルートで防ぐ詩琉

「くっ・・・!」

防いだものの強力な力を完全には受け止められない

「邪魔よ」

反転の勢いにのったフェイミィの裏拳が詩琉にまともに当たる

「がはっ!!」

その場に詩琉が崩れ落ちる

「ぐっ・・・だが・・・時間は稼げたはず・・・」

苦しみながらも笑みを浮かべる詩琉

「しまった!?」

ヘルサスのほうを振り向くフェイミィ







詠唱は最終段階に入っていたがまだ魔法は発動されていない

「間に合ったか!」

ヘルサスに高速の蹴りを放つフェイミィ

ドンっと肉体にめり込む音が響く

「がはぁっ・・・」

しかし蹴りを受けたのはヘルサスではなくアカハナだった

「や、やっぱ・・・無理だって・・・」

気を失うアカハナ

「ちっ!!余計なことを・・!!」

我焦がれ 誘うは焦熱への儀式

「まだっ!」

フェイミィの拳がヘルサスを襲う

バキッと音が響く

しかしながら拳を受けたのはふぎんだった

「いったろ・・・なんとかするって・・・」

其に捧げるは 炎帝の抱擁

「間に合わないっ!」

フェイミィが後退する

ヘルサスの両手に魔力が凝縮され体が光輝く

「イフリートキャレス!!」

詠唱終了とともにヘルサスの手から魔力が開放される

魔力が開放され王宮の城壁を突き破ってすさまじい紅蓮の炎が降り注ぐ

「くっ!?」

懸命に避けるフェイミィ

ひとつの炎の長さは20mに達しようとするほど巨大な炎

いかにフェイミィといえどそう簡単に避けきれるはずもない

「や・・・やっ・・・た・・・」

全身の魔力全てを開放し、その場に倒れるヘルサス

その間もフェイミィに容赦なく紅蓮の炎が降り注ぐ

まさに炎の雨といったところ

「ならばせめて、この場からは逃がさない!!」

避けずに詠唱途中の風結びに突進するフェイミィ

突進に気がつく風結び

「い、いけない!?まだ詠唱が不十分なのに!!」

「しかたない!ウィザードゲート!!」

風結びが詠唱が不十分のままウィザードゲートを唱える

そのままライト達は王宮から姿を消してしまった

廊下のメタス、ブルーも含めて
















十数発の炎をすべて避けきり落ち着きを取り戻すフェイミィ

その頭上から崩れ落ちた城壁が降ってきた

「はぁっ!」

頭上に拳を突き上げるフェイミィ

城壁を粉々に叩き割る

「はぁ・・・まさかイフリートキャレスを放ってくるなんて・・・」

「10年前以来だわ・・」

そういって崩れ落ちた一本の柱に近づくフェイミィ

瓦礫の下からテリエを片手で引っ張りあげる

「な・・・何のマネ・・・だ・・・」

「ふふふ・・・貴方をここで殺すのは惜しいと思って」

「いらん・・・なさけは・・・」

「貴方には色々と役に立ってもらわないと」

「それに闇のオーブも手に入ったし、ブラムス様も許してくれるでしょう」

そういって姿を消すフェイミィ

かくして王宮内部での激戦は幕を閉じた

詠唱が不十分なウィザードゲートを使うとどうなるのか

それは神のみぞ知るところであった