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優しさすら感じ取れる風の匂い

その風にたなびく、美しく整えられた金色の髪

彼はふと考え事をしていた

(・・・はたしてこの事を報告するべきなのか?)

彼の名は詩琉

詩琉はヴァルハラの大地に立っていた

(おかしい・・・明らかに腑に落ちない・・・)

「詩琉」

考え事をしている彼を呼ぶ声があった

「これはフレイ様」

そういって詩琉が肩膝をつく

「ふふ、あいさつはいいわ。オーディン様がお呼びよ」

(くっ・・・考えがまとまっていないのに・・・)

「どうしたの?何か問題でも?」

「いえ、すぐに伺います」

そういってフレイの後について歩き出す詩琉

















その煌びやかな宮殿はまさに天界を治める者が居座るにふさわしい

爽厳で美しく、しかし力強い

その宮殿に臆することなく詩琉は奥へと進む

(いつきても周りの目が変わることはない、か)

姿は見せなかったが

柱の影から幾人もの神族が冷たい視線で詩琉を見つめていた

「人間のくせに・・・」

「オーディン様に目をかけてもらってるからって調子に乗るなよ」

「一緒の空気に触れているだけで気分が悪くなりますわ」

詩琉が歩いているとひっきりなしに声が聞こえてくる

「気にしないほうがいいわよ」

フレイが振り向かずに言う

「あははは、もう慣れましたよ」

詩琉が元気のない笑い声を上げる

まもなく玉座の間に詩琉は立っていた

「詩琉よ」

重々しくしかし威圧感すら漂わせる声でオーディンが話す

「はっ、ただいま戻りました」

詩琉ひざまずく

「うむ、ご苦労であった」

「私などにもったいないお言葉・・・ありがたく頂戴いたします」

「詩琉」

フレイが話しをさえぎる

「はっ、いかがなさいましたか?」

「人間たちに気が突かれずに、どうやって戻ってきたの?」

「詠唱が不十分なウィザードゲートの混乱に乗じて戻ってまいりました」

「なるほど・・・どうやら刺客必要ないみたいね」

「無論、その必要はございませぬ」

「して、詩琉よ」

「はっ」

「何か変わったことがあったようだが?」

「実は、全大戦、すなわち四勇士のうちの一人フェイミィと交戦いたしました」

「ふむ」

「かつての光のオーラはなく、今では闇の者となりくだっていたようです」

「いかがいたしましょう?オーディン様」

詩琉がオーディンを見上げる

「捨て置け」

「は?」

「かまわん、捨て置いておけと言っているのだ」

「で、ですがフェイミィはかつての四勇士!!その四勇士が敵についたと知れたら!!」

「心配はいらん、詩琉よ。四勇士といえどたかが人間。我らアース神族はその程度では混乱せぬ」

(・・・・たかが人間・・・か)

「はっ、非礼をお許しくださいませ」

詩琉がひざまずく

「よい。それよりも、闇のオーブは地上にあったのか?」

「確認はできませんでしたが、おそらくはフェイミィが持ち去ったかと・・・」

「ふぅむ・・・となるとブラムスの手に渡った可能性が高いか・・・」

「オーディン様」

フレイが口を開く

「闇のオーブの真の使い方にブラムスが気がつけば」

「フレイ、そのことは話さずともよい」

オーディンが目で威圧する

「も、申し訳ありません」

フレイが頭を下げる

(闇のオーブの真の使い方だと・・・?)

「詩琉よ、お前に闇のオーブの奪還を命ずる」

「はっ!!」

「残念ながら今の状態ではうかつに兵を出すことはできん。地上の戦士達と協力して奪還するのだ」

「はっ!」

「先ほど、詩琉が送った魂を護衛につけよう。フレイよ」

「はい、オーディン様」

返事をし、フレイがパチンと指を鳴らす

すると詩琉の横に一人の戦士が現れた

「お呼びですか、オーディン様」

「この者は、お前が送ってきた魂の真の姿よ」

「そこの詩琉と共に地上に赴き、闇のオーブを奪還せよ」

「ははっ!!」

戦士がひざまずく

「姓は大神、名は一郎!よろしく、詩琉君」

「よろしくお願いします」

二人が挨拶を交わす

「では、私はこれで失礼する」

オーディンが立ち去ろうとしたとき

「お待ちください、オーディン様!」

詩琉が呼び止める

「何だ?話は終わったのではなかったのか」

「すこし、気になったことがございまして」

「申してみよ」

「実は戦乙女と出会いまして・・・・」

詩琉がそう言い出した瞬間にオーディンとフレイの顔つきが変わった

「いかがなされましたか?」

「何でもない、続きを」

「はっ、そのときに戦乙女が好んでいたヴァルハラの音楽を奏でたのですが」

「その音楽を聴いたとたん、頭を抑えて苦しみだしたのです」

「詩琉よ」

「はっ」

「そのことは忘れろ」

「えっ?」

詩琉の顔に疑問の表情が浮かぶ

「な、なぜですか?」

「詩琉よ。これはお前が口を出す問題ではない。それに戦乙女も音楽が嫌いになったと申しておったしな」

「そうね、レナスが言っていたわ」

「で、ですが!あれほど好んでいた旋律を嫌いになるはずが!!」

「詩琉よ」

「余計な詮索は無用だ。いいな?」

すさまじい威圧感で詩琉を圧倒する

「は、はい・・・」

「ならばいけ。早急に闇のオーブを取り返すのだ」

そういってフレイとともに姿を消すオーディン








(やはり何かある・・・)

(気づかれて、消されるのが先か、真実を見極められるのが先か・・・)

「どうかしたかい?詩琉君」

「いえ、いきましょうか、大神さん」

そう言って宮殿の入口へと歩き出す二人



この詩琉の疑問が後に天界を左右する出来事になるとは

このときは誰一人予想していなかった・・・