「う・・・ここは・・・?」

ふぎんが頭を押さえながら言う

「そうだ・・・うちたちはウィザードゲートで飛んだんだったよな・・・」

状況を整理するふぎん

「いてて・・・腹が痛い・・・」

「ん?」

ふぎんが声のしたほうを見る

「ふぎんさん・・・一体どうなったんですか?」

アカハナがたずねる

「さぁ・・・うちも今考えてるんだがここは・・・」

ふぎんがあたりを見渡す

「・・・どうやらさっさと移動しないと危険かもね・・・」

ここはルアスの森最深部

近頃、いるはずのない巨大な龍が出現するという噂が後を立たない場所だ

「そういえば、みんなはどこいったんですか?」

アカハナが回りを探しながら言う

「どうやらはぐれてしまったみたいだね。風ちゃんの詠唱がうまくいってなかったんだろう・・・」

「とりあえず、あたりを探してみてまだ誰かいないか確認した後、ここを離れよう」

「わかりました!」













しばらく探した後ふぎんとアカハナが落ち合う

「どう?誰かいたかい?」

「いやぁ、こっちには誰もいませんでした」

「そうか・・・仕方ないな。うち達だけでも離れようか」

「ふぎんさん帰り方とかわかるんですか?」

「一応ここには風ちゃんと来たことあるからね。何とか道順くらいは覚えてるよ」

「たしか・・・こっちのはずだ」

そういってふぎんが歩き出す

その後を追ってアカハナも歩き出す

「でも、何かでそうな雰囲気だなぁ」

アカハナが歩きながら言う

「おいおい怖いこと言わないでくれよ。」

ふぎんが苦笑しながら返す

「ここからどのくらいで街に着くんですか?」

「ん〜ざっと2日もあれば着くんじゃないかなぁ。なんていっても最深部だからさ」

「うげぇ・・・2日もあるのかよ・・・」

がっくり肩を落とすアカハナ

「まぁまぁ、モンスターのいるところにワープしなかっただけでもありがたいと思わなきゃさ」

なだめるふぎん






ふたりが歩き出して2時間ほどが経ったころ

ふたりは開けた場所にでた

「なんかここは見渡しがいいですねぇ」

「うん、ここは整備されてる場所だね。モンスターの襲撃に備えやすいしちょっとここで休憩しようか」

ふたりが腰を下ろそうとしたその時

前方のほうから聞き覚えのない泣き声が聞こえてきた

「アカハナ君、休憩はこの後だ。どうやらモンスターがきたみたいだよ」

「え・・・本当ですか!?」

ふたりが臨戦態勢を整える

「あ、あれは・・・!?」

ふぎんが言葉を失った

とてつもなく巨大な槍をもったモンスター

ドロイカンナイトの姿があったからだ

「そんなばかな・・・こんなところにドロイカンナイトが居るはずがない!」

驚きを隠せないふぎん

「ふ、ふぎんさん!!あ、あれ!?」

アカハナが声を大にして言う

「あれは・・・!?風ちゃん!?」

ドロイカンナイトの前方には倒れたままうごかない風結びの姿があった

「まずい!!」

ふぎんがすぐさま走る

「ふぎんさん!!」

アカハナもすぐにその後を追いかける

ふぎんの脚力ならドロイカンナイトが風結びのところまでたどりつくよりも先に悠々到着できるはずだった

しかし

「がはぁっ!!」

突如ふぎんが口から吐血する

そのまましゃがみこむふぎん

「く、くそ・・・!こ、こんなときに・・・!!」

ふぎんの意識が虚ろになっていく

「ふぎんさん!?」

アカハナが驚いて走るのを止める

「あ、アカハナ君・・・!いいから風ちゃんを・・!」

「えっ、で、でも」

「いいから!!」

声を荒げるふぎん

そんなやりとりをしている間にドロイカンナイトは風結びのすぐそばまで迫っていた

アカハナが走り始めたころには、すでにドロイカンナイトの槍が風結びめがけて振り下ろされようとしていたところだった

「風ちゃあああああああああん!!!」

ふぎんが叫ぶ

しかし風結びの反応はない









ドロイカンナイトが槍を突きたてようとした瞬間

ガキィィイインッ!といった金属音が響いた

何者かがドロイカンナイトの槍を盾で受け止めたのだ

「情けない・・・ドロイカンナイトごときで全滅か?」

その男はドロイカンナイトに負けないくらいの巨大な槍を手に持っていた

「おい、こいつはお前達の仲間か?」

男がふぎんに向かって言う

「ああ・・・大切な・・・仲間だ・・・」

苦しそうに言うふぎん

「ならばお前が守ってやれ。失ってからでは遅いんだぞ」

男が風結びをふぎんの方向に向かって蹴る

風結びの体が宙を舞い、アカハナのところに飛んでいく

「け、蹴った!?」

ふぎんが信じられないものを見たように驚く

そんな反応を尻目に男がドロイカンナイトと交戦を始める

キシャアアという泣き声とともにドロイカンナイトが槍を振るう

それを難なく受け止める男

「甘いな」

そういって飛び上がる男

「ドロイカンナイトの急所は・・・!」

「ここだ!」

飛び上がり、空中で回転しながらドロイカンナイトの背中に当たる部分に狙いを定める

「食らえ!!」

空中で巨大な槍をドロイカンナイトに向かって投げる男

そのまま槍はドロイカンナイトに突き刺さる

ギェエエエエと叫び声をあげるドロイカンナイト

そのまま巨大な体は横たわり痙攣をしている

「い、一撃か・・・!?」

ふぎんが絶句する

痙攣しているドロイカンナイトに容赦なく槍を突き刺し息の根を止める男

「す、すげえ・・・情けってものがない・・・」

アカハナも絶句する

「ふん、大してすごくもないだろう。それともそんなにお荷物な仲間と旅をしてきたのか?」

「お前はドロイカンナイト程度でてこずるやつじゃないとみえるがな」

ふぎんに向かって言う男

「・・・とりあえず礼を言うよ。でもな、風ちゃんを蹴ることはないんじゃないか!?」

ふぎんが男に詰め寄る

「ふん、戦うのにそこにいたら邪魔だと判断したまでだ」

「だからって蹴ることはないだろう!」

激しくまくしたてるふぎん

「まったく・・・そんな状況判断もできんやつだったか」

やれやれといった感じで話し出す男

「お前はあのまま俺がドロイカンナイトと交戦していたらどうなっていたかわかってるんだろう?」

「ぐっ・・・!」

言葉に詰まるふぎん

「わかっているのに変なことを言い出すな。正しいのは俺の判断だろ」

そう言ってマントを翻す男

「じゃあな。邪魔したな」

「ま、まってくれ。名前だけでも教えてくれないか?」

「・・・プレッシング」

そう一言だけ言って男は森へと姿を消していった

「ふぎんさん・・・大丈夫ですか?」

アカハナがかけよる

「ああ・・・心配ないよ。たまにでる発作みたいなもんさ」

「で、でもあの苦しみ方は・・・」

「アカハナ君。このことは風ちゃんにも黙っておいてくれるかい?」

「えっ?」

「いいから。頼む」

いつになく真剣な表情のふぎん

「わ、わかりました・・・」

「・・・よし。風ちゃんも大丈夫そうだし、早くここから離れよう」

「風ちゃんはうちがおぶっていくから、アカハナ君は先頭にたって警戒を頼めるかい?」

「わ、わかりました」

(しかしあの男・・・ドロイカンナイトを一撃で倒すとは相当な実力者のはずだ・・・)

ある一人の騎士と出会ったふぎん達

この両者が再び出会うのはすこし先のことであった