ザッザッザッザッ

砂浜を踏む規則正しい音が聞こえてくる

「はっはっはっはっ」

それに伴い息をする音も聞こえてくる

ライトたちがバランの家にたどり着いて1週間が経とうとしていた

「はぁっ・・・はぁっ・・・ラ、ライトさん・・・私は・・・もうだめです・・・」

聖騎士が砂浜に倒れこむ

「はっはっ・・・そうですか?まだ走り始めて1時間ほどしか経っていませんよ?」

ライトが息をしながら言う

「1時間て・・・修道士と一緒にしないで・・・ください・・・」

息を切らしながら言う聖騎士

「わかりました。俺はもうちょっと走りますね」

そういって砂浜を走り出すライト

「ライトさんまだ走るのか・・・」

(俺がもっと強くならなきゃ・・・あのときも時間を稼げればこんなことにはならなかったはずだ・・・!)

黙々と走るライト

その横ではスミレの特訓が続いていた

「はぁあっ!!」

スミレがナイフを投げる

真ん中とはいえないが大分的に当たるようになってきたようだ

「お〜〜!やっぱスミレちゃん筋ええわ!こんな短期間でこんなに上達するのもなんか複雑な気分やな」

バランが拍手まじりに声を出す

「いやいや、バランさんのおかげですよ」

あはははと笑うスミレ

(しっかしわっからんなぁ・・・あの最初の神業はどういうことやったんやろ・・・)

「どうかしましたか?」

「ん?ああ、なんでもあらへんあらへん。さぁ、続けよか〜」

かくして日が暮れていくのであった



























その夜

「はぁぁ、スミレちゃん料理上手いなぁ!これまじでうまいわぁ」

そういってスープを飲むバラン

「ほんとうですね。スミレさんの料理あんまり食べたことなかったけどこんなにおいしいとは・・・」

ライトも感嘆の声をあげる

「いえいえ。たいしたことないですよ。」

そういいながら照れるスミレ

「いやぁ、ほんまこんなににぎやかなんはいつぶりやろう」

バランが笑う

「すいません、かなり長い間居候させてもらって・・・」

聖騎士が言う

「かまへんゆーてるやん。俺も楽しいし、何も問題あらへんて!」

バシっと軽く聖騎士の頭を叩く

「あはは、ご馳走様でした」

ライトが食器を持っていく

「ごちそうさん!」

それと同時にバランも席を立つ

炊事場でバランがライトに耳打ちする

「ライト」

「えっ?どうかしました?」

「お前スミレちゃんと長いこといっしょにおるか?」

「いや、長くはないですね」

「ふむ・・・そんでな」

「スミレちゃん、たまに人が変わったようになれへんか?」

「・・・一度だけ。すさまじい速さで敵を殲滅したことはあります」

「・・・一度だけか・・・」

「どうかしたんですか?」

「ん、なんでもあれへん。忘れてくれや」

そういってポンポンと肩をたたくバラン

「じゃあ、また向こうもどっとくからな〜」

(なんだったんだろ・・・スミレさんが人が変わる・・・?)

カチャカチャと食器を洗いながら考えるライト

そこに聖騎士とスミレがやってきた

「どうでしたか?今日は結構うまくできたと思ったんですが」

「いや、すごくおいしかったですよ!」

「ええ、旅館に負けないくらいでしたね」

「ほんとですか!?そう言っていただけると、作ったかいがありますよ!」

あははと笑う三人

「しかし、ここにきてからライトさんがんばってますね」

「いやぁ、本当にもっと強くならないと・・・」

「みんなに迷惑かけっぱなしなので・・・」

「いや、その向上心が大事だと思いますよ。私も言える立場ではないですがね」

聖騎士が言う

「そうですねぇ。いくら強くなっても向上心をなくしたらそこで成長は止まってしまいますからねぇ」

スミレもうんうんとうなずく

「スミレさんも投げナイフすごい上達ぶりですね」

「あはは、お世辞でもうれしいですよ」

「いやいや、お世辞じゃないですって!」

ライトたちが談笑していると

「お、おかしらぁああ!!」

突如、家の入り口から声が聞こえてきた

「お、お前は!?一体どないしてん!?」

バランの声も聞こえてくる

「ど、どうしたんでしょうか?」

「とにかく行ってみましょう!」

三人が入り口にかけつける

そこには海水に濡れた男が居た

「おかしら!!た、助けてください!」

「何ゆーてんねん。俺はもう隠居した身やで?それにあいつがはりきっとったやろが」

「そ、それが・・・」

「どないしたゆーねん」

「最近、人が変わったように乱暴になってみんな傷だらけなんですよ」

「ふぅん。それで?」

「物に当り散らすから船もだいぶガタがきてて・・・」

「そこにさっきモンスターの集団が襲い掛かってきて・・・」

「・・・モンスターの集団やと?」

「そ、そうです・・・今、船上で戦っていますがなにせおかしらと一緒に船を下りた人たちのかわりがいなくて・・・」

「・・・・・」

「今、本当に危ない状況なんです!助けてください!おかしらあ!」

懇願する男

「・・・知らん。」

「えっ?」

「知らんゆーてるやろ。そもそもあの時にゆったはずや。何があろうともう俺には頼ってくるなと」

「そ、それは・・・」

「都合のいいときだけ頼ってきて片付いたらいらんてか。あほらしい」

「で、でも!おかしらもあの船が好きだったはずでしょう!!」

「お前らは変わってしまったんや。仲間を平気で見捨てられるやつらと一緒におることなんてできるか!」

バンと床を蹴るバラン

「お願いします!おかしら!!」

「あかんもんはあかんねん。大体自業自得ちゃうんか」

「くっ・・・!」

「帰れ帰れ」

冷たくあしらうバラン

「・・・もういい!あんたにたのんだ俺がバカだった!!街で傭兵でも探しますよ!」

バァンッ!と激しい音を立ててドアを閉める男

「・・・・・」

その様子をじっと見ているバラン

「・・・どうやら何かあったみたいですね」

「あの男をみる限り、バランさんは元々海賊をやってたみたいですね」

「なるほど・・・だからあれだけめずらしいダガーを持ってるのか・・・」

三人がバランに気づかれないように話す

「ん?食器とか洗い終わったんか?」

バランが後ろを振り向く

「うおおおお!?」

ライトがスミレに押し出されて前にでる

「ナイスです、スミレさん」

聖騎士が小声で言う

無言で親指を立てるスミレ

「ん?どないしたんや?」

「い、いえ、なんでもありません」

「そうか。ちょっと気分悪くなってきたから今日は早く寝るな」

「そ、そうですか。お大事に・・・」

そういい残して奥へと消えるバラン

三人が顔を見合わせる

そしてそれぞれの部屋に散っていった





















「・・・」

ただ黙々と荷物を整理するバラン

「・・あかんな・・・どうにも・・・」

そうつぶやきダガーを2本腰に刺すバラン

足音を立てずに入り口のドアを開ける

「お、お前ら!?」

そこにはライト、スミレ、聖騎士の姿があった

「水臭いですよ、バランさん。」

「さっきの話聞いてたんか・・・」

「聞くつもりはなかったのですが、自然と耳に・・・」

スミレが言う

(思いっきり聞く気あったじゃないか・・・)

「で、そんな格好してどうするんや?」

「きまってるじゃないですか」

「あかん」

「えっ?」

「これは俺の問題や。おまえらが危険な目にあう必要あらへん」

「いやいや、俺達の、でしょ」

三人が親指を立てる

「おまえら・・・」

「すまん、正直、しばらく実践してないから不安は不安やねん」

「悪いけどすこし付き合ってくれるか?」

「もちろんですよ!こんなによくしてもらってるのに、恩は返さないと!」

「・・・よし、んじゃいこか!こっからやとルケシオンの近くの海域やと思うねん」

「そこまでどうやって行くつもりですか?」

聖騎士が尋ねる

「こっちきてみ」

バランが砂浜を歩いていく

やがて小さな岩場にたどり着いた

そのいわばに隠れて小さな船があったのである

「小型船でも、いけると思う。これにのって出発や!」