ここはルケシオンの船着場

そこにバランたちの船が停泊していた

ルケシオンの海賊達のアジトの明かりが暗闇に光っていた

「お前ら」

バランが口を開く

「さて、これからお前らはどうするつもりや?じきにここにやってくるんは間違いないと思うで」

海賊たちがざわざわと騒ぎ出す

「おかしら・・・どうしましょう?」

一人の海賊がキャメルに意見を求める

「ふん、見たところ金目の物はなさそうだし、放っておけ。」

キャメルが言う

「お前それ本気で言ってんのか!?」

バランがキャメルに歩み寄る

「何がおかしい。当たり前のことを言っただけだ」

バランに背中を向けるキャメル

「おまえ・・・!ここの人たちがどうなってもいいゆうんか!?」

「はっ!仲間を見殺しにしたお前が何を言い出す!!」

キャメルの言葉を聞き、自分の耳を疑うライト達

「えっ・・・!?」

「バランさんが・・・仲間を見殺しに・・・!?」

「・・・」

まぶたを閉じ黙るバラン

「そ、そうだ!忘れるところだった!!」

「あの人はあの時・・・」

その場が一気にざわめきだす

「バ、バランさん・・・?」

「・・・全部本当のことや。」

ボソッとはき捨てるように言うバラン

「お前ら本気でこんなやつに従うのか!?いつ見捨てられるかわからないんだぞ!」

キャメルが声を大にして話し出す

「さぁ、どうする!?お前たち!仲間を平気で見捨てるようなやつについていくか、俺様についてくるか!」

海賊達が口々に話し出す

「お、おいどうする!?」

「正直なところ、キャメル船長にも愛想が尽きてきてるけど、見殺しにされるよりは・・・」

「俺まだ死にたくねえよ・・・」

「・・・・」

その様子を黙って見守るバラン

「バランさ・・・」

ライトが話しかけようとするのを手を差し出し、無言で止める聖騎士

「ここは見守りましょう。私たちが出る幕じゃないです」

聖騎士になだめられて発しようとした言葉を途中で終わらせるライト

「お前ら、まだまだ死にたくねえだろ!?こいつについていったら、間違いなく殺されるぞ!」

「・・・俺、キャメル船長についていくよ」

「俺も」

「あいつみたいに見殺しにされたらたまったもんじゃないしな・・・」

海賊たちの口々の言葉を聞き

「・・・・決まりやな」

そういい残しアジトをでていくバラン

「はーーっはっはっはっは!!どうだ!お前についていく奴なんていないんだよ!!」

バランの背中に罵声を浴びせるキャメル

「ライトさん、追いかけましょう」

「ええ、もちろんです」

すぐにバランの後を追いかけるライトと聖騎士






















バランは夜のビーチに一人たたずんでいた

「バランさん!!」

「一体何があったんですか!?」

ライトと聖騎士がバランに追いつく

「聞いてたやろ?あいつらの言う通りや」

「俺にはバランさんがそんなことするなんて思えません!」

「一体どういう状況だったのですか・・・?」

二人の言葉を聞き、静かに話し出すバラン

「1年ほど前かな・・・」

「そのとき俺はあの船の船長やってたんや」

「海賊っつっても義賊を目指してたから、襲うのは悪い噂が立ってる船だけやってんけどな」

「それでもみんな楽しくやってたわ」

「ある日、船の上で夜を越そうとしてたら、突然、みたこともない船が襲い掛かってきたんや」

「当然みんな寝静まってたからパニック状態になってしまってな」

「応戦したんやけど、相手がまた悪かったんや・・・」

「その相手とは?」

「海の悪魔デムピアス部隊」

「デ、デムピアス部隊!?実在したのですか!?」

聖騎士が驚く

「ああ・・・俺も信じられへんかってんけど、実際遭遇してしまったもんはどうしようもないからなぁ・・・」

「ただでさえ相手にするのは避けたいとこやのにそんな状況やったからまたたくまに押されていってな」

「とりあえず退却することにしたんやけどそのときに可愛がってた戦士見習いがおってな」

「なかなか戦闘能力はあってんけど、数で劣ってたからさすがに厳しくてな」

「船がデムピアス部隊から離れようとしたときにいきなり、雷が落ちてきて」

「その戦士見習いが海に投げ出されてん」

「俺は必死でそいつの手掴もうとして、掴めてんけどな・・・」























「バランさん!!もういいです!その手を離してください!!」

海に宙吊りになっている戦士が言う

「ばかやろう!!そんなことができるか!!」

バランが必死に船に戻そうとする

しかし、このときの戦士の装備は重装備でその重さは100kgをゆうに超えていた

「こんなとこで死なせるわけにはいかへん・・・・!!絶対にひっぱりあげたる!!」

「こんなところで時間を割くわけにはいきません!!早く退却してください!!」

戦士が言う

「あかん!」

聞く耳を持たないバラン

「貴方は船長でしょう!!みんなの命を優先するべきです!」

「そんなこと・・・お前が心配せんでもええ!」

「うおおおおおおおお!!」

声をあげて引っ張りあげようとするバラン

しかし、そう簡単にはあがらない

その様子をデムピアス部隊が発見した

すかさずにバランに魔法を投げかける

「ぐぅ・・・!」

デムピアス部隊のアイスランスがバランの足を貫く

「バランさん!?」

「だ、大丈夫・・・や!それよりも、はやくあがって一緒に酒でも飲もうや・・・!」

痛みをこらえ必死で引き上げようとするバラン

引っ張りあげようとするバランにはおかまいなしで魔法がドンドンと飛んでくる

戦士の顔つきが変わる

「・・・・・・・バランさん、今までありがとうございました」

突如話し出す戦士

「お、おい、何言いだすんや!?」

「本当にこの1年、みんなと一緒で楽しかったです」

「変なこと言うなや!」

「ここでお別れです。バランさん、どうかご無事で・・・!」

そう言い終わると

戦士は腰にさしてあった剣で自らの腕を切り落としたのだった

「なっ・・・!?」

バランとのつながりがなくなり海に落下していく戦士

その顔は安らかな笑みを浮かべてさえいたのであった

「そんな・・・・あほな・・・・」

呆然とするバラン

その手には戦士の左腕だけが残っていた

「・・・・・・・・・・くっ!!」

すぐに舵室に走りこむバラン

「はやくださんかいぼけぇ!!」

「せ、船長!!あいつは!?」

「あんまり粘りよるから俺が腕切り落としたってん!コレが証拠じゃ!!」

そういって戦士の左腕を見せるバラン

「せ、せんちょう・・・・!?」

「ちっ・・・!どけ!!俺がやる!!」

そういって強引に舵をとるバラン

「逃げるでぇ!!しっかりつかまっとけよおおおお!!」
























「・・・バランさん・・・それは仕方のなかったことなのでは・・・?」

ライトが言う

「いや・・・俺が油断してて敵船の侵入を許したのは事実やし、何よりあいつを引っ張りあげられへんかったんも俺のせいや」

「あいつを殺したんは俺や」

「違います!」

ライトが怒鳴り声にも似た声をあげる

「バランさんは悪くない!」

「ライトさん・・・」

「あのなライト。悪いとか悪くないとかの問題じゃないねん。」

「でも、事情を話したらみんなわかってくれるはずです!!」

「いや、話はせーへん。」

「なぜ!?」

「それが、あいつを見殺しにした償いやと思うから・・・」

「・・・ライトさん。」

「ここは我々がどうこう言えるところじゃない」

「くっ・・・!」

唇を噛むライト

「バランさん、それでどうするおつもりなのですか?」

聖騎士が尋ねる

「ん、俺がいくよ」

「俺がいくよって・・・あの大群に一人でですか!?」

「そうや。もう生きてる意味もないし、やれるだけやったろうと思ってな」

バランが言い終わると突如ライトがバランに殴りかかった

吹っ飛ぶバラン

「ラ、ライトさん!?」

聖騎士が驚く

「生きてる意味もない・・・だと!?あんた、それ本気で言ってるのか!?」

激しく怒りを表にだすライト

「その戦士さんが自分の命を捨ててまで救ってくれた命を、そんな簡単に捨てるのか!?」

「・・・」

「どうせなら、そのやられたデムピアス部隊を倒すことがせめてもの償いになるんじゃないのか!!」

「・・・・」

「あんたがしていることは償っているんじゃない・・・ただ現実から逃げてるだけだ!!」

「もういいじゃないですか・・・戦士さんの為にも、前を向きましょうよ・・・」

「・・・・・・・・・」

無言で立ち上がるバラン

「・・・そうやな。俺は逃げてただけかもしらんな。」

振り返るバラン

「バランさん・・・」

「自分の為、仲間の為、街の為、そしてあいつの為にも、あの船は沈めなあかん」

「ライト・・・危ない目にあうかもしらんけど、手かしてくれるか?」

「もちろんですよ!」

そういって手を差し出すライト

「お前に教えられるとはなぁ」

そういいながら手を堅く握るバラン

「スミレちゃんに言ってたもんもそろそろ完成してるころやろ・・・それを上手く使えば、この人数で押さえ込める」

「あの巨大な物ですか」

「ああ・・・っよし!」

パアンッ!と自分の頬を叩くバラン

「ほないこか!!絶対に勝つで!!」

「いきましょう!」

「必ず勝って、ここに帰ってきましょう!!」

そういってスミレの待つ船に走り出す三人













その同時刻に海賊のアジトに近づく人影がひとつ

「バランさん・・・まだ居るかなぁ」