ルケシオンの街からすこし離れた岩場に小型船が隠れていた

その船上で、黙々と何かを縫っているスミレ

「スミレちゃん、ゆーてたもんできてるか?」

バランがスミレに声をかける

「あ、おかえりなさい!一応、もう少しで完成の予定です」

「さすがにはやいなぁ。男共とは大違いやわ」

笑うバラン

「そうそう、男共といえば海賊さん達はどうなったんですか?もうすでに出発してるとか?」

ライト達の表情が変わる

「あー・・・それはやな・・・」

「海賊さん達は万が一に備えて、街の人々を避難させています」

聖騎士が二人を遮って発言する

「えっ・・・じゃあ私たちだけで応戦するんですか?」

「そういうことになりますね」

スミレの表情が変わる

「そ、そんな・・・!?あれだけの数を相手にですか・・・!?」

「大丈夫や。あとで援軍がくることになってるから」

ライトがバランの顔を見る

「あ、なるほど!私達は囮、つまり陽動作戦ってことですね!」

スミレがうんうんとうなずく

「そうそう、そういうことや」

「バランさん・・・いいんですか・・・?」

ライトがスミレに聞こえないようにバランに囁く

「行く前から戦意喪失したら終わりやぞ・・・?」

「それにスミレちゃんは女やぞ?俺らみたいに腹くくれゆーてもそう簡単にいかんやろう・・」

「・・・」

黙り込んでしまうライト

「ん?何か言いましたか?」

「い、いや、なんでもあらへんよ。それより、そっちはもうできそうか?」

「これで・・・よし、全部縫い終わりました!」

「よっしゃ!これをこうやって丸めてやな・・・」

バランがスミレがいままで縫っていたものを丸め始める

「これをこの爆弾の入れ物にいれてっと・・・」

「なるほど・・・私にもどういう戦略かわかりましたよ」

聖騎士が首を縦に振りながら言う

「まぁでも、やってみなわからんねんけどな」

バランが立ち上がる

「うし!!ほな、いざリベンジに!!」

かくしてライト達はたった4人でノカン軍団に挑むこととなった







































時を同じくルケシオンにて

「詠華さ〜ん・・・まってくださいよぉ〜・・・」

詠華と呼ばれた女が振り返る

「もぉ〜・・・早くしないと間に合わないよ!?大河君、男でしょう?」

大河と呼ばれた男が言う

「そ、そんなこといったって・・・」

「これ以上早く歩けないですよぉ〜・・・」

弱音を吐く大河

「じゃあ走りなさい」

サラリと返す詠華

「そ、そんなぁ・・・」

(彼の者が近づいているのは事実です。急ぎましょう大神さん)

詠華が他の者には聞こえない声で話す

(わかった。早くいかないと取り返しのつかないことになりかねない。)

(とはいったものの・・・)

(どうやって海上に出るつもりだい?詩琉君)

(幸い、ここは港街。すこし声をかけてみればなんとかなるでしょう)

「すいませ〜ん」

詠華が通行人の漁師風な男に声をかける

「あの〜、私達ど〜〜しても今すぐに船がいるんです!船をお持ちじゃないですかぁ?」

すがるような目で男を見る詠華

(詩、詩琉君・・・)

「おおお、ねぇちゃんえらいべっぴんさんじゃねーか!」

男が食いついてくる

「俺の言うこと何でも聞くっていうんなら考えてやってもいいかな」

腕組をしながら言う男

「はいっ!船をお貸しいただけるなら、何でもします!」

目を輝かせる詠華

「ほほう・・・」

男がニヤリと笑う

詠華は動じずただ笑顔を浮かべている

「どうだい?俺の筋肉、すごいだろう?」

そういって男が力こぶをつくってみせる

「わぁ〜〜!すっごーい!重たい物も軽々持てそうですねぇ!」

興味津々といったそぶりを見せる詠華

その様子を横から見ていた大河が

「ノリノリですね・・・詠華さん・・・」

ボソッとつぶやく



その瞬間に大河の頭を詠華の拳が襲った

「ふぎゃあ!」

大河の声が響く

「ん?どうした?」

「いえいえなんでもありません」

笑いながら言う詠華

「それで、船は一体どこにあるのでしょう?」

詠華が本題に戻す

「ん?ああ、この街じゃ組合で決められてて、港にある船は自由に使っていいんだよ。それより、この後俺の・・・」

言い終わる前に男は倒れてしまった

詠華が腰に携えた小型ハープで眠らせてしまったのだ

「さぁ、いくよ、大河君。急がなきゃ!」

詠華が港を指差しながら言う

「うう・・・ひどいや詠華さん・・・」

頭をさすりながら詠華を見つめる大河

「ん〜?なんかいった〜?」

これ以上ない笑みを浮かべ大河に尋ねる詠華

「ひぃいい!!こ、殺される!!」

すぐに立ち上がる大河

「ほら!さっさと走りなさい!!」

立ち上がった大河を後ろから蹴る詠華

「うう・・・ひ、ひどい・・・」

そのまま走りだす大河

(おそらくここに近づいてきているモンスターの船にやつは現れるはず・・・)

(早急に聞き出さねばならないことがあります。全力でいきますよ大神さん)

走りながら詠華が話す

(わかった。しかし、やつの魔法はどう対処するつもりだい?)

(大丈夫です。私の力を信じてください)

「さぁ、この船でいそがなきゃ!」

「行きましょう!僕の力見せてあげますよ!」

大河が握りこぶしを作る

「じゃあお願いね」

これ以上ない笑みとともにオールを渡された大河

「え・・・?」

「お・ね・が・い・ね?」

「そ、そんなぁ・・・」

しぶしぶオールと受け取る大河







かくして事態は予想もしなかった方向へと進むことになるのであった