(ええか。この作戦はライトがどれだけ敵の注意をひきつけて、どれだけ耐えられるかによって成否が変わってくるゆーても過言やあれへん)

(たのんだで!期待しとるからな!)

ライトは船の上で出発前に言われた言葉を思い返していた

「ライトさん、あまり気負いすぎずに・・・気負いすぎてもいいことは何もありませんよ」

船を漕ぎながら聖騎士が言う

「ええ・・・わかっているつもりです」

そういう言葉がでたものの、ライトは明らかに緊張していた

いままで戦術の主要人物になったことのないライトは考えてはいけないことすらも頭に思い浮かべてしっていた

(俺が・・・俺がしっかりしないと・・・)

ぶつぶつと一人つぶやき続けるライト

(・・・・・・これは・・・大丈夫か・・・?)

(かといって今のライトさんに何を言ってもうわの空だろうし・・・)

不安にかられる聖騎士

(これで敵の反応が予想と違ったら・・・)

ライトの考えも聖騎士の考えもまとまらないまま船は敵船近くへとたどりついてしまった

(仕方ない・・・今はライトさんを信頼するしか・・・・)

「ライトさん、そろそろ準備してください。敵はもう目の前まで迫っていますよ」

(できるのか・・・?俺に・・・・)

「ライトさん!!」

聖騎士がひときわ大きな声を上げる

「うおお!?な、なんですか?」

「なんですか?じゃないですよ!敵はすぐそこなんですよ!?」

「あっ・・・!?」

ライトの目にはまったく敵の姿など映っていなかったのだった

「まぁ・・・ここで責めても仕方ありません。頼みますよ、ライトさん」


















ライト達にやや遅れて反対方向から近づくスミレとバラン

「スミレちゃん、最終確認や。」

バランが船を漕ぎながら言う

「ライトがどれだけ耐えられるかは、正直わからへん。」

「頃合になったら聖騎士が合図だすってゆってたから、それをみて俺らは飛び出す」

「ふむふむ」

「ここまではええな?」

「ええ、大丈夫です」

うなずくスミレ

「俺たちが船に上がったんを見て聖騎士がさっきの物を投げよる」

「それを俺とスミレちゃんで狙う」

「私に期待はしないでくださいね・・・」

苦笑しながら言うスミレ

「まぁ大丈夫やろ。俺もやるしな。そんな緊張せんでもええからさ」

話ているうちに敵船が目の前に迫っていた

「よし、こっからはおしゃべりはなしや。息殺して潜むで・・・」


















「行きます!」

ライトが掛け声と共に船から飛び上がり、敵船に着地する

「さあこい!!」

船に散らばっているノカン達の注意をひきつけるライト

それに気がつき一斉にライトに向かっていくノカン達

「うおおおおお!!」

はじめのノカンを豪快に正拳突きで吹き飛ばすライト

(大丈夫・・・!体の調子もいい・・・!)

次々とノカンをなぎ倒していくライト

その船の下からブレシングスキルを唱え続ける聖騎士

「心配無用だったか・・・これなら十分ひきつけられる!」

甲板の様子に気がつき船の2階部分からニュクノカン達が姿を現す

ライトに向けて一斉に狙いを定める

その様子に気がつき

「聖騎士さん!出てきました!」

「ライトさん!手はずどおりお願いします!!」

そうライトに告げた後、船に積んであった小石を船の反対側に投げる聖騎士

小石は船を横断し、反対の海に音を立てて落ちる

「よし、いくでスミレちゃん!!」

バラン達が船に飛び乗る

それと同時に聖騎士も船に飛び乗っていた

「ライトさん、お願いします!」

ライトが拳に気を集中させる

船の2階部のニュクノカン達にイミットゲイザーを放つ

ニュクノカン達の注意が一斉にライトに向けられる

その間に1階部の大量のノカン達がライトめがけて進軍する

「よし、今だ!」

聖騎士が手に持っていた少し大きめの塊を地上のノカン達の上空に投げる

「いまや!」

「はい!!」

スミレとバランがほぼ同時にナイフをその物体に向けて投げる

ナイフが丸くなっている物体を射抜いた

射抜かれた瞬間に蜘蛛の糸のようなものが一斉に開く













「よっしゃ!これで・・・・!?」

聖騎士が投げた物体が開いて地上のノカン達は一斉に動けなくなるはずだったが

なんと、蜘蛛の糸が空中で凍ってしまったのだ

「あほかっ!?なんで凍ってまうねん!!」

驚き、戸惑うライト達

「クックック・・・策といってもやはりその程度か・・・」

ライト達が声の方向を見上げる

「デ、デンパさん・・・!?」

ライトが声を上げる

「あ、貴方は!?」

スミレもデンパに気がつく

「スミレちゃん知り合いか!?」

「一応・・・でも、敵です!」

「敵!?デンパさんが!?」

ライトがスミレを見て言う

「そうです!私、殺されかけました!」

「スミレさんが!?殺されかけた!?」

「はっきりとは覚えていませんが、サラセンの森で・・・」

話の最中

「あぶない!!」

聖騎士がライトを突き飛ばす

元のライトがいた場所には吹き矢が6本も突き刺さっていた

「何を戦闘中に話しているんですか!?敵は目の前なんですよ!!」

「くっ!?」

ライトに近づいてきているノカンとすぐさま交戦状態にはいるライト

「作戦が失敗した以上、どうやって撤退するか考えないと・・・!」

戦況を冷静に判断していたのは聖騎士だけではなかった

(あの魔術師・・・・相当やばいな・・・・)

バランはデンパの強さを肌で感じ取っていた

「スミレちゃん・・・なるべくあいつの気引いといてくれ・・・」

スミレにしか聞こえない声でいうバラン

「え?」

「いいから・・・このままやりあっても勝ち目あらへん・・・」

「わ、わかりました・・・」

小さくうなずくスミレ

「デンパさん!!なぜあの時あんなことをしたんですか!?」

スミレが見上げながら言う

「クックック・・・・さあな」

デンパが返す

「なぜですか!!?」

「お前は自分が思っている以上に危険なんだよ・・・」

デンパがスミレに向けて氷の刃を繰り出す

それを間一髪で避けるスミレ

「言っている意味がわかりません!私が何をしたっていうんですか!?」

「知らないほうが幸せというものだ」

続けざまに火球と氷槍を繰り出すデンパ

火球を受け流し、氷槍を飛んでかわすスミレ

「ぐぅう・・・!」

ライトはかなり疲労していた

慣れない一対多数の戦いは想像していたものよりもはるかに疲労が激しく

なにより一瞬も油断できない緊張感に疲れ果てていたのだ

(くっ・・・!ブレシングスキルじゃ体力の回復が間に合わない・・・)

聖騎士が懸命に魔法を唱えるがライトには気休め程度にしかなっていなかった

「がふっ!?」

いつの間にか接近を許したノカンに腹部に打撃を食らうライト

「うおおおお!!」

力を振り絞り、接近したノカンを殴り飛ばす

吹っ飛ぶノカンを横目にみながら何もなかったようにジリジリと進軍してくるノカン軍団

「そっちがその気なら!!」

スミレがデンパに向かって飛ぶ

「ほう・・・やる気になったのか。」

スミレがダガーを突き出す

ドシュッと音がして、デンパの腹部にダガーが突き刺さる

「や、やったの!?」

しかしすぐにデンパが消えてしまう

「えっ!?」

「クックック・・・!残像すら見切れないほど腕が落ちたか!!」

スミレの背後に姿を現し火球をぶつけるデンパ

「きゃあああああ!!」

そのまま甲板に叩きつけられるスミレ

「さて、前回のように長引かせては危険だからな。さっさと済ますか」

デンパの両手に今までとは比べ物にならない魔力が集まる

(まずい!!)

聖騎士がそれを感じ取る

「いましかあらへん!!」

バランが船底に向かって爆弾をおもいきり投げつける

船底に当たった瞬間にまばゆい光が現れた

「くっ!?閃光弾か!?」

デンパすらまともに光を浴びてしまう

「聖騎士!!ライトつれてもどるんや!!」

バランがスミレを抱えて船端に走る

「ライトさん!退きましょう!!」

「りょ、了解で・・す!」

息を切らしながら返事をするライト

バランが船端に到着し海に飛び込もうとしたとき

「あ・・・・!?」

そこには元きた船はなかった

「ふ、船が・・・ない・・・」

聖騎士側の船も忽然と姿を消していた

「バカどもめ・・・敵を迎え撃つときはまず退路を塞ぐのが定石だ」

デンパが言う

「そ、そんな・・・・」

ライトが膝をつく

「・・・・・あかんか・・・」

バランもあきらめたような声でつぶやく

「まだ終わったと思うなよ?」

デンパが指を鳴らす

すると信じられないことに船底からノカンたちが現れたではないか

その数はゆうに100を超えていた

「はっはっは!!絶望をかみ締めながらじわじわと逝くがいい!!」

デンパが高笑いする

「こりゃあ・・・どうやっても4人じゃあかんかな・・・」

バランが手を上げる

「まさしくお手あげやわ・・・」

「くっ・・・!?本当に・・・これで・・・終わるのか・・・!?」

聖騎士が身構えたままつぶやく

「いけ!ノカン達よ!その者どもを殴り殺せ!!」

デンパの号令で一斉に動き出すノカンたち

ライトたちは双方船端へと追いやられていた

ノカン達が一斉に腕を振り上げる

二階部分のニュクノカンたちも一斉に吹きやを構える

「こんなところで・・・」

ライトが目を瞑る

























その刹那

ビィィンッと何かが船に突き刺さる音がした

ライトが目を開ける

「こ、これは・・・!?」

そこには矢が刺さっていた

しかも一本ではない

無数の矢が船に降り注いでいるのだ

次々と矢に貫かれ絶命していくノカン達

「い、一体!?」

「なんやなんや!?」

「何者だ!?」

デンパが海上を見る

そこには一隻の巨大な海賊船があった

その船首にいる人物をライト達は見たことがなかった

「あ、あれは・・・!?」

そこには一人の男が立っていた

「おおおおーーーい!!バランさあああん!!」

バランが声に気がつき

そして、その人物に気がついた

「お、お前は・・・炎浪!!!?」