海賊船が船に接近する

その間も矢は雨のように降り注いでいた

次々と上陸を開始する海賊達

そして船首に立っていた男が船に降り立つ

「え、炎浪!?ほ、ほんまにお前なんか・・・!?」

バランが信じられないものを見るような目をする

「お久しぶりです!」

笑顔を見せる炎浪

「お、お前どうやって・・・!?」

「積もる話は後回し!今は先にモンスターを!」

「お、お前片腕で戦えるわけ・・・」

バランが炎浪の腕を見る

しかしそこにはなくなったはずの左腕があったのだ

「あ、あの時確かに・・・」

「ああ、心配しないでください。これは義手ですから」

「義手・・・」

「ええ、これでも結構役に立つんですよ!」

そういって背中にしょった細い槍を取り出す炎浪

「や、槍?お前・・・槍なんて使われへんはずじゃ・・・」

「ええ、でも片腕だと、剣より槍のほうが楽なんですよ。リーチも長いですしね」

そう、両腕でしっかりと握ることができない炎浪は片腕でも貫通力のある槍を武器に選んだのだ

「それに、槍って便利なんですよ」

そういって片腕で槍を高速で回転させる

ニュクノカンの放ってきた吹き矢が槍にはじき返される

「こういうこともできますし・・・ね!」

近づいてきたノカンを槍で串刺しにする

そしてその後ろのノカンも巻き込み一気に2体を仕留める

「みんなもきてくれました!いきましょう!バランさん!!」

バランが後ろを振り返るとかつての仲間が立っていた

「バラン船長」

「バランさん、話はすべて炎浪に聞きました」

「すいませんでした!!」

「お、お前ら・・・」

少し涙ぐむバラン

「・・・お前ら帰ったら覚えとけよ!!」

「全員吐くまで酒のませるからなぁ!!」

叫ぶバラン

「いくでぇ!!反撃やああああ!!!」

おおおおおおおお!!と大きな声があがる

一斉に海賊達がノカンに向けて進軍する

「な、なるほど!このタイミングで援軍がくる予定だったんですね!!」

スミレが言う

「なるほど・・・あの人が話をしていた炎浪さん・・・」

「状況を打開するには今しかありませんね・・・!ライトさん、いけますか!?」

「い、いけます!!」

「いきましょう!1対1ならライトさんにかなう敵はいないはず!!」

「はい!!」

ライトと聖騎士がノカンに突撃する












「ちぃっ・・・いくら雑魚が集まっても結果は同じだ!」

デンパが両腕に魔力を集める

「これでこの船ごと消し去ってくれよう・・・!」

デンパが詠唱を始める

「我招く、無韻の衝裂に慈悲はなく・・・」

「させないわよ!」

詠唱中のデンパの背後からするどい蹴りが飛んできた

詠唱に集中していたため、まったく気づかずに食らい甲板に叩きつけられるデンパ

「ぐぅ・・・!な、何者だ!?」

そこには修道士と戦士の姿があった

「デンパ・・・覚悟しなさい!」

「貴様・・・オーディンの使いか!?」

大河が一歩前にでる

「僕の名前は大・・・・」

「そんなことどうだっていいのよ!今ここで、滅してもらうわ!」

大河の言葉を遮る詠華

「な、名前くらい・・・」

落ち込む大河

「・・・・いいだろう。近接攻撃のみで俺に勝てると本気で思っているのならな!」

デンパが再び宙に浮く

そしてすぐに手をかざす

「ウインドバイン!!」

詠唱なしで魔法を放つデンパ

「くっ・・・!」

「うわぁっ!?」

とっさに横に飛び避ける詠華と大河

「大河君!手はず通りおねがいね!」

「了解です!詠華さん!」

すぐさま大河がデンパに向かって飛ぶ

「ばかめ!!空中では身動きもとれまい!!」

デンパの視線が大河に向かう

「いまだ!!」

詠華が手で十字架を描く

すぐさま詠華が歌を歌い始める

「死ぬがいい!!」

デンパが大河に氷槍を飛ばそうとする

しかし、何もでてはこなかった

「な、なにぃ!?」

驚き戸惑うデンパ

「はああああ!!」

大河が剣を振る

とっさに身を回転させ、かする程度に抑えるデンパ

「ま、魔法が使えない・・・?!」

「まさか・・・バインドボイス!?」





バインドボイス

天上界にのみ伝わる秘術

魔力を持った声で相手の詠唱を封じてしまう魔法。これを習得するには才能に努力を重ねなければならない上級魔法






「き、貴様・・・!なぜ吟遊詩人に・・・!?」

「あなたが天界にいたころは肉体を持った状態だったんだろうけど、私達は魂だけの存在」

「ましてや、地上マイソシアでフォームチェンジすることくらいわけないわ」

詠華が再び十字架を描く

「さぁ、観念なさい!」

詠華の両拳に気が集まっていく



















「うおおおお!!」

ライトがノカンを蹴散らしながら甲板中央へと進んでいく

海賊達とノカン達の激戦は収まりつつあった

数では劣る海賊たちであったがそれを補って余りある士気の高さがあった

次々とノカンを殲滅していく

「むっ・・!?」

聖騎士が何かに気がつく

「ライトさん気をつけてください!」

2階部分から一匹のノカンが飛び降りてきた

「あの時の・・・」

そのノカンは通常のノカンとは皮膚の色が違っていた

手には棍棒をもっている

「聖騎士さん・・・援護おねがいします・・・!」

ライトが構えをとる

「わかりました。ライトさん、気負いすぎなければ勝てますよ!」

聖騎士が詠唱を始める

「むっ・・・デンパさんがいない・・・?」

スミレがふと気がつく

海賊達に目を向けているうちにデンパの姿が見えなくなっていたのだ

「はっ!?」

上空から一目で有害とわかる液体が降ってきた

それを後方に回転し避けるスミレ

「これは・・・猛毒・・?」

スミレに猛毒を投げかけたノカンが姿を現す

「こいつを倒せば味方への被害は少なくなるはず・・・・」

「神崎スミレ!お相手いたします!!」

「炎浪!俺らは敵の親玉つぶしにいくぞ!」

「親玉ってどいつなんですか!?」

バランが指を刺す

「おそらく二階にいるはずや。着いたら判断すりゃええ!」

「あははは!バランさんらしいや」

声を出して笑う炎浪

「どういう意味やねん、それ!」

「いや、何も」

笑いながら答える炎浪

「まぁ、ええわ!ほんならいくで!!」

二階部に向けて走りだす二人

海上の激闘は確実に終わりに向かおうとしているのであった