グリードノカンが毒薬を投げつけてくる

それを前進しながらも確実に避けていくスミレ

「あのスピードなら、食らう前にたどり着ける!」

どんどんとグリードノカンに近づいていくスミレ

その距離があと30m近くに迫った時

グリードノカンが手を上にあげた

すると、なんと目の前にノカンの群れが現れたのであった

これにはスミレも驚きを隠せない

「ええっ!?一体どこから!?」

スミレが戸惑っている隙にグリードノカンが毒薬を投げる

「!!」

首を横に振り紙一重で避けるスミレ

「あ、あぶない・・・!それに・・・」

グリードノカンを守るかのように列を作るノカン達

「これじゃ近寄れない・・・!」

スミレが動きを止める

それを待っていたかのようにノカン達が一斉に襲い掛かる

「くっ!!」

バックステップを踏み、ノカンの襲撃を回避するスミレ

(このままじゃ、じきに体力に限界がきてやられちゃう・・・!)

そう、モンスターと人間では圧倒的に体力が違うのだ

長引けば長引くほど不利になるのは当然の理であった

(一体どうすれば・・・)

(・・・・・・!!)

何かを考え付いたスミレ

(成功するかわからないけど・・・やるしかないか・・・!)

「・・・よし!」

スミレがキッと前を向く

「集中・・・集中・・・!!」

ぶつぶつとつぶやきだすスミレ

その間もノカン達はスミレに迫っていた

ノカン達がスミレに一斉に飛び掛かる

そのタイミングにあわせてグリードノカンが毒薬を投げる

「今しかない!!!」

ノカン達が飛び掛った一瞬

スミレの目の前にはグリードノカンしかいなかった

スミレが左腰に差したナイフに右手を掛ける

かけたとほぼ同時に

「食らええええええええ!!!」

掛け声とともに右手を振りぬく

振りぬいた直後に後ろに飛び、ノカンの襲撃を回避する

しかしあまりに動作が急だったので尻もちをついてしまうスミレ

「いったぁ・・・・・・はっ!当たった!?」

スミレがグリードノカンの方を見る

そこには眉間にスミレのナイフが突き刺さり

断末魔を挙げる暇すらなかったグリードノカンの姿があった

それと同時にノカン達も消えていった

「や、やった!!!!うまくいったんだ!!」

スミレが両手をあげて喜ぶ

しかし

バシャアッと水がかぶったような音がした

「え・・・・?」

スミレはグリードノカンが最後に空中に向けて放り投げていた毒薬をかぶってしまったのだ

しかも本来、後ろに飛ばなければ当たっていなかった毒薬を

「こ、これって・・・」

「・・・ツイてないなぁ・・・」

スクッと立ち上がるスミレ

「・・・せめて動けるうちだけでもライトさんたちを援護しなきゃ・・・!」

そうつぶやいてライト達の方向に足を向ける

しかし、前進する足取りはすでに落ち着いた足取りではなかったのであった



















「せやああああ!!」

「ふんっ!はっ!おりゃあああ!!」

掛け声とともにライトの両手両足から次々に技が繰り出される

同時に次々とノカン達が駆逐されていく

(これが先ほどまで疲れ果てていた人の動きか・・・?)

聖騎士がライトを見て思う

(たしかに戦闘において気力の充実はかなり重要な要因だが・・・)

「むっ!?ライトさん、色違いがきますよ!」

聖騎士が声をかける

「了解!まかせてください!!」

ライトが色違いのノカンに向かって飛び出す

「いけない!ライトさん!!気をつけて!!」

聖騎士があわてて後を追う

「うおおお!!」

ライトが前に飛ぶ

そのまま空中でまわし蹴りを放つ

いままでのノカンなら間違いなく命中していたはずだったが

ライトのまわし蹴りは空を切った

「なにぃ!?」

色違いのノカンはとっさにしゃがんで避けたのである

そのまま立ち上がり体が回転して無防備なライトめがけて

手にもった巨大な棍棒を叩き込む

空中で身動きがとれないライトはそれをまともに食らってしまう

「がっは・・・!」

勢いよく吹き飛ぶライト

「くっ・・・!」

それを懸命に受け止める聖騎士

「大丈夫ですか!?」

「ええ・・・聖騎士さんのおかげでなんとか体は動きます・・」

よろめきながらも立ち上がるライト

「しかし・・・どうしましょう・・・あの蹴りを瞬時に避けれるとなると相当やっかいですよ・・・」

聖騎士が手を顎に当て、考える

「・・・いけます。俺に考えがあります」

ライトがノカンの方向を見る

「考え・・・一体どうするつもりですか?」

聖騎士が話し終わるよりも先に飛び出すライト

「なっ・・・!?ライトさん!?」

またしても後を追う聖騎士

「せえええい!!」

ライトが正拳を繰り出す

それを体を横に傾け避けるノカン

横に向けた状態から反動を利用して棍棒を振り回す

それを飛んでかわすライト

飛びざまにすぐに遠心力を利用した後ろ回し蹴りを放つ

それをまたもやしゃがんで避けるノカン

「ばかな!!?なぜ二度も同じことを・・・!!」

聖騎士が走りながら言う

ノカンが再びライトの着地を狙って棍棒を繰り出す

「いかん!!」

聖騎士が魔法の詠唱を始める

「はぁっ!!」

ライトが着地した瞬間に声をあげる

ノカンの棍棒がライトに直撃する

メキッという嫌な音が響いた

しかしライトは吹き飛ばされない

「くっ・・・!うおおおおおお!!」

棍棒を側面からまともに食らいながらまっすぐに拳を突き出した

ドンッという音が響いた

それはノカンの頭部をしっかりととらえた

何かすさまじい勢いのものにぶつかったかのように頭部から甲板に激しく叩きつけられるノカン

モンスターといえど急所を思い切り叩きつけられたノカンが生きていることはなかった

「ラ、ライトさん!!」

聖騎士があわてて駆け寄る

「なんて無茶を・・・!!すぐに治療を!」

聖騎士が魔法を唱え始める

「ははっ・・・あんまり時間をかけている暇もなかったですし・・・ね」

ライトがわき腹を押さえながら話す

「しかし、思った以上に損傷が少ない・・・何をしたんですかライトさん?」

聖騎士が治療をしながら尋ねる

「イミットゲイザーを放つ時に集める気を防御に使えないかなぁと思いましてね」

「体中に気を集めたはいいんですが、やはり一箇所に集中すべきでしたね・・・いてて・・」

硬気法

物理防御力を全身の気の力によって高める奥義

熟練した修道士なら攻撃を食らう場所一点に気を集中させ大幅にダメージを減らすがライトにはまだそこまでの操気術はなかった

「なるほど・・・しかしなぜ私にも教えてくれなかったのですか!?」

「敵を欺くにはまず味方からってね・・・」

「ライトさん・・・それは使いどころが違うような気もします・・・」

「そ、そうですか?」

「まぁ、とにかく大した傷はなくて良かった。傷が癒えたら私たちも二階部分に向かいましょう!」