「蒼蘭さん、ひとつ質問があるのですが」

聖騎士が発言する

「はい、なんでしょうか?」

「ここに来る前にレクタスタッフを見つけました。ということは蒼蘭さんは聖職者ですよね?」

「ええ、御察しの通りです」

「蒼蘭さんもキュアポイズンを使えないのですか?」

「・・・ええ・・・というよりも、魔法自体が使えないのです」

蒼蘭がうつむきながら言う

「なんと・・・それは力がなくなってしまった、ということですか?」

「ええ・・・ある日突然使えなくなってしまいました。もう3年も前のことです」

「そうでしたか・・・すいません、変な質問をしてしまって」

聖騎士が頭を下げる

「いえいえ。聖職者なら誰でも抱く疑問です。お気遣いなく」

蒼蘭が微笑む

「おい炎浪・・・」

バランが炎浪に耳打ちする

「なんですか?」

「お前、ものごっつべっぴんさんやないか!」

「だからいったでしょ、すっごい美人だって」

ニヤリと笑う炎浪

「こんなべっぴんさんにずっと介抱してもらってたんかお前は!!」

「えへへ・・・そりゃあもう天国でしたよ・・・あんなことやこんなこと・・・」

「なにぃ!!?お前詳しく聞かせろ!!」

「いやです、ふふふ」

「おまえはああ!!」

取っ組み合いを始める二人

「やめましょうよ二人共!スミレさん、寝てるんですよ!?」

ライトが注意する

「う・・・ほらぁ〜バランさんのせいで怒られちゃったじゃないですか〜!」

「なにぃ!?お前のせいやろ!!」

「はいはい。場所移しましょうか」

聖騎士がリビングに向かう

「すまん!誰かいないか!?」

「すいませ〜ん!」

玄関先から声が聞こえてくる

「はい〜少々お待ちください〜」

蒼蘭が玄関に向かう

「む・・・あの声は・・・」

聖騎士も玄関に向かう

玄関先にいたのはブルーとマリーネだった

「どのようなご用件でしょうか?」

蒼蘭が用件を聞く

「こちらにどんな病気も治せるという聖女が住んでいると聞いてきたんだが・・・」

「ブルーさん、それにマリーネさん!どうしてここに!?」

聖騎士が姿を現す

「聖騎士じゃないか!あんたこそどうしてここに!?」

「マリーネさん、今は再会を喜んでいる場合じゃない。一刻を争うんだ」

「あ、ああ。すまないね」

「どうなされたのですか?」

「今、仲間が猛毒に侵されているんだ。しかも相当危険な状態で」

「必ず直せるとは言い切れませんが、症状を見ることならできると思います」

「すぐにその方をここへ!」

「すまない!すぐに連れてくる!!」

そう言い残し、もと来た道を走っていくブルー

「あ、じゃ、じゃあ連れてくるね!」

マリーネも後を追う

「ふむぅ・・・猛毒ですか・・・」

蒼蘭が薬の並べてある棚の戸を開ける

「・・・これが効けばいいのですが・・・」









「ふぎんくん!人がいたぞ!!」

ブルーがふぎんの元に戻る

「本当かい!?それじゃあすぐにそこに連れていこう!」

「アカハナ君!すまないが街までいって、風ちゃんとヘルさんを呼んできてくれないかい?」

「わ、わかりました!!」

すぐに街に向かって走り出すアカハナ

「うちらも急ごう!!」

小屋に向かって走り出すふぎん達





「う〜ん・・・知ってる人はいないみたいね・・・」

「だね〜・・・誰も何にも知らないってことはいないのかなぁ・・・」

風結びとヘルサスが途方にくれていると

「あ、アカハナだ」

ヘルサスが指をさす

アカハナが浜辺方面から走ってきた

「な、なんか浜辺の先に小屋を見つけたみたいで・・・」

「ええ!?本当!?」

「はい・・・それでふぎんさん達もそこに向かうから風結びさん達もこいって・・・」

「あったんだ・・・誰も知らないのに・・・」

「うん・・・おかしいよね・・・」

風結びとヘルサスが顔を見合わせた直後

アカハナの背後に何者かが瞬時に現れた

すぐさまアカハナの口をふさぐ

「アカハナ君・・・悪いけど少し付き合ってもらうわよ」

耳元でそう囁く

そのまま音も立てずにアカハナごと消え去ってしまった

「あれ?アカハナさん?」

風結びが気がつく

「いままでいたのに・・・もう走っていっちゃったのかな・・・」

「まったく・・・アカハナは先走るとこあるからね〜!あたしたちもすぐ追いかけよっか!」

「そうだね!すぐいかなくっちゃ!」

風結びとヘルサスが走り出す





「あそこだ!」

ブルーが先導する

外に出て待っていた蒼蘭が

「こちらです!すぐに寝かせてください!!」

寝室へと案内する

「ふぎんさん!?」

ライトがふぎんと再会する

「おお!!ライト君じゃないか!ちょっとまってくれよっと」

ふぎんがディアリアをベッドに降ろす

すぐに蒼蘭が様子を見る

「・・・」

「・・・どうだ?」

ブルーが心配そうに伺う

「・・・・かなり危険な状態です。傷口より直接猛毒を注入されたようですね・・・」

「はにまるのやつ・・・ポイズンスダガーを使うなんて・・・本気でいったんだな・・・」

「猛毒というものは厄介なものでして、薬を投与する以外に治療の方法がないのです・・・」

「最善を尽くしますが、最悪の状況も想定して置いてください・・・」

「・・・くっ!!どうすることもできんのか・・・!」

ブルーが拳を強く握る

「・・・それでは申し訳ありません・・・薬の調合に入るので席をはずしていただけますか?」

蒼蘭が立ち上がる

「あ、ああ、すまない。みんな、外にでようか」

ブルー、ふぎん、ライトが席を立つ




「おろ、そちらの方々は?」

ふぎんがバラン、炎浪を見て言う

「ああ、こちらは・・・」

それぞれが自己紹介をしていると

「すいませ〜ん!」

風結びとヘルサスも合流した















「なるほど・・・それで見事魔物船を撃退したってわけだね」

「ええ、みんなの協力もあってなんとか撃退できました」

「しかし、デンパさんが途中でいなくなったのが気がかりですが・・・」

「そ、そういえば!!」

ライトが思い出したように声を出す

「そうやな、あんだけの魔術師がなんで俺らを見逃したんかがわからんな」

うんうんと頷くバラン

「見逃した・・・か。実はうちらも相当大きな事件が起こってね・・・」

ふぎんがルアスで起きた出来事、そして現状を話す

「なんと・・・あのルアス王国が、しかもフェイミィさんの手によって落ちたと・・・」

聖騎士が信じられないといった様子で言う

「ああ、そしてスオミも落ちたみたいだ・・・」

「す、スオミまで・・・」

「一体マイソシアはどうなってしまうのでしょう・・・」

メタスが不安そうに声を出す

そんな話の途中で寝室の扉が開いた

蒼蘭が出てくる

「容態はどうだ!?」

ブルーがいの一番に聞く

「ええ、今夜が峠になるでしょう・・・まだ予断を許さぬ状況です」

蒼蘭がうつむきがちに言う

「・・・そうか・・・」

「皆様も見たところ相当にお疲れのご様子。今日はゆっくり体を休めてはいかがでしょうか?」

蒼蘭が提案する

「・・・そうだね。みんなかなり疲労してるだろうし、お言葉に甘えて休もうか」

ふぎんが賛同する

「しかし、蒼蘭さんはずっとつきっきりなんだろう?俺も起きておくよ」

ブルーが言う

「いえいえ、これは私にしかできないことですし、お気持ちだけで十分です」

微笑む蒼蘭

「さぁ、もう夜も遅いですし、寝床におつきになってください」

「・・・ブルーさん、ここは蒼蘭さんに甘えよう?ブルーさんだって疲れてないわけがないだろう?」

「しかし!」

「あ〜、うちらが起きてたら蒼蘭さんの邪魔になるんだよ。蒼蘭さんに最善を尽くしてもらいたいだろう?」

「う・・・」

「わかったらさっさと寝よう。ここはうちらの出れる幕じゃない」

ふぎんが蒼蘭に一礼する

「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」

「ええ、おやすみなさいませ」

再び微笑む蒼蘭

そして夜が更けていった






















真夜中

ふとふぎんの目が醒めた

「・・・やっぱり気になるな・・・うちも聖職者のはしくれ、すこしでも手伝いにいくか」

ふぎんが再び寝室へと足を運ぶ

すると真夜中にもかかわらず、寝室の扉から青白い光が漏れている

「ん?・・・蒼蘭さん、魔法が使えないって言ってたよな・・・」

「いや、そもそも聖職者にあんな光をだす魔法はないはずだが・・・」

ふぎんが扉に手をかける

すると中から蒼蘭の声が聞こえてきた

「・・・」

なぜか扉から手を離すふぎん

そしてそっと中を覗き込む

「・・・・」

そこには何かを決意した蒼蘭の姿があった

そして蒼蘭が何かの詠唱を始める

「光を司る精霊ルナよ・・・我の下にその姿を現したまえ・・」

蒼蘭が両手に魔力を集中させる

蒼蘭の目が開かれる

するとまばゆい光と共に精霊ルナが姿を現したのだ

同時にふぎんの目も見開らかれる

(そんなばかな!?精霊を呼び出すなんて、まして具現化した状態で!?)

続けて詠唱を開始する蒼蘭

「ルナよ・・・すべての者に等しく与えん治癒の光を、我が力を媒体に其へと分け与えたまえ・・・」

「オーディナリーシェイプ」

蒼蘭が詠唱を終えると

ルナの体から眩くも優しい光がディアリアの元へと吸い込まれていった

すると今まで苦しそうだったディアリアの表情が消え、落ち着いた眠りの表情へと変わったのだ






オーディナリーシェイプ

かつて地上に存在したすべてを知り尽くした賢者のみ使用することができたと言われる秘術

光の精霊ルナの力を対象にダイレクトに注入する魔法

誰もがその秘術を習得しようとしたが習得できたものはいなく、消滅してしまった古代魔法






「ありがとう・・・ルナ」

蒼蘭がルナの体にそっと触れるとルナは姿を消してしまった

一部始終を見ていたふぎんが腰を抜かす

「そ、そんなばかな・・・精霊の具現化召喚に失われた秘術だと・・・?」

「に、人間技じゃない・・・何者なんだ・・・」

ふぎんが腰を抜かしていると



ふぎんの目の前にはふぎんを見下ろしている蒼蘭の姿があった