「ふっ!!はぁっ!!」

早朝から鍛錬に励む声が響き渡る

「精がでますねぇ」

聖騎士が姿を見せる

「あっ、聖騎士さん・・・起こしちゃいましたか?」

ライトが申し訳なさそうに言う

「いやいや。昨晩はかなり早く就寝したので勝手に目が覚めただけですよ」

聖騎士が笑う

「しかし、今日くらい休めばいいものを・・・いくらなんでも体に負担がかかっているでしょうに・・・」

「いやぁ・・・俺よりも先に、ああやって鍛えてる人がいますから・・・」

そういって指を指すライト

そこには黙々と構えからの動きを反復しているプレッシングの姿があった

一目みただけで相当な時間をかけていることがわかる汗を流しながら

(・・・この俺が二人がかりで倒せなかっただと・・・!?)

(ふざけるなよ・・・!!次に会ったときは必ず・・・!)

ギッと歯を食いしばり、槍を振るうプレッシング

「なにやら鬼気迫るものがありますね・・・」

その様子を眺める聖騎士とライト

「ええ・・・ふぎんさんの話によると相当な人らしいのに、あれだけ鍛錬をくりかえしているんですから・・・」

「俺も負けていられませんよ!」

ぐっと拳を見せるライト

「その意気です!」

聖騎士も拳を見せる

「ところで話は変わるんですが、ふぎんさんを見ました?」

聖騎士が問う

「ええ、朝見ましたよ」

「またですか・・・」

「ですね・・・」

はぁ・・・と二人がため息をつく

すると

「ち、違う!!誤解だ!!」

小屋から悲鳴にも似た声が聞こえてきたのであった

「お、はじまったか」















「なぁにが誤解だっていうのかしらぁ?」

風結びが詰め寄る

「誤解って、そこまで証拠があるのにまだ逃げるつもりかい?」

マリーネも詰め寄る

「さっすがふぎんさん、チェックは抜かりなしってわけだね!」

ヘルサスまでもが詰め寄る

「あきれて何も言えませんね・・・」

「いくら俺でもさすがにそこまでは・・・」

「まさかバランさん以上の人がいるとは・・・」

メタス、バラン、炎浪も口を揃える

「ちょ・・・ちょっと待ってくれ!!うちが何をしたっていうんだい!?」

ふぎんが必死に訴える

「まだ言うのかい?」

「何もしようとしていないのに、女だけの部屋の前でパンツ一枚でいる男がどこにいるのよ!」

風結びがまくしたてる

「だから何回も言ってるだろう!?ほんとに覚えていないんだって!!」

ふぎんが身振り手振りで訴える

「覚えてないくらいに舞い上がっていたんだ・・・」

「最低だねぇ」

「あきれて何もいえませんね」

「ちーがーうってだから!!何もしてないでしょ!?ねぇ!?」

ふぎんが蒼蘭に詰め寄る

「は、はい・・・」

すこし後ろに下がりながら答える蒼蘭

「何無理やり言わせてるのよ!!」

風結びが足払いをする

見事にふぎんの足を捉え、しりもちをつかせる

「ぐっ!」

「今日は何がいいのか特別に選ばせてあげる」

「1、火 2、氷 3、土 4、雷」

「さぁどれ?」

ニッと笑みを浮かべる風結び

「じゃ、じゃあ土で・・・」

「土ね。じゃあその前に・・・」

風結びがふぎんの両手を縛り上げる

「ええ!?な、なにを!?」

「じゃーみんなではこびましょー!」

腕を上げる風結び

それに答えて全員が腕を上げる

「ちょ・・・!どこに連れて行く気なんだい!?」

ふぎんを全員で一斉に運び出す

小屋のすぐ前で一行が足を止める

「ヘルサスさん、協力してね」

「もちろんさ!」

二人で地面に向かってファイアビットを連発する

地面に人が一人すっぽりと入るくらいの穴が出来上がったのであった

「ま、まさか・・・」

ふぎんが担ぎ上げられた上で必死に暴れる

「頭が冷えるまでここで見張りでもしときなさい!」

ポイッと穴の中にふぎんを放りなげる

そして全員で穴を埋めてしまったのだ

ふぎんの顔だけが見える程度に

「ちょっとおお!!誰かきたらどうするんだよ!!」

ふぎんが叫ぶ

「犬のおしっこでもかかってなさい」

冷たく返す風結び

「あっ!!ちょ、ちょっと!!本当に犬きちゃったよ!!ねぇ!!風ちゃん!?」

わめくふぎん

それを何も聞こえないふりをして小屋の中に入る一行

「ちょ!!しっしっ!!あっちいけ!こっちに・・・」

「うわあああああああああ!!や、やめろおおおおおお!!」

ふぎんの叫び声がこだまする
























しばらくして、ブルーがふぎんの元にやってきた

「おお!本当に埋まってるな!」

ハハハと笑うブルー

「笑ってる場合じゃないよ・・・」

ふぎんが少し泣きそうな声で言う

「しかも目の前に犬の糞とは・・・ふぎんくんも好きだねぇ、ハハハ」

「好きでこうなったんじゃない!!!」

怒るふぎん

「ところでさぁブルーさん、昨日の夜、だれがうちの服を脱がしたか知らないかい?」

「ああ、昨日の夜更けに俺が脱がしといた」

「・・・・・・え?」

状況が飲み込めないふぎん

「いやさ、行儀が悪いなぁと思って部屋まで引っ張っていこうと思ったんだが、服だけひっぱってしまってね」

「それでどうせ脱ぐなら全部脱いだほうが男らしいかなぁって思ってさ、ハハハハ!」

笑うブルー

「なんでそうなるんだよ!!」

首だけでわめくふぎん

「さぁ?」

笑いながら言うブルー

「・・・もういいよ・・・」

あきれ気味にふぎんが言う

「それじゃあ飯の時間だし、そろそろ戻るよ。ごゆっくり〜」

ブルーが立ち上がる

「えええ!?ちょっと!!このままおいていく気!?」

「う〜ん・・俺には真似できないなぁ・・・」

ぶつぶつひとり言をいいながら戻るブルー

取り残されるふぎん

「うう・・・うちが何をしたっていうんだ・・・」

普段の行いが災いするものだと痛感したふぎんであった





一方そのころ

天界ヴァルハラでは一人の男がオーディンの前にひざまずいていた

「・・・オーディン様・・・」

「どうした詩琉よ。浮かない顔をしているが、何かあったのか?」

「・・・」

切り出せない詩琉

「どうした。申してみよ」

オーディンが笑いながら言う

「・・・オーディン様」

詩琉が口を開く

「アフロディーテ様のことなのですが・・・」

その言葉を聞いた瞬間にオーディンの顔つきが変わった

「アフロディーテがどうした」

「その・・・行方不明になられたとおっしゃってましたが・・・」

「そうだ。それがどうかしたのか」

「気になる噂を耳にいたしまして・・・」

「どういった噂だ、申してみよ」

「その・・・非常に申し上げにくいのですが・・・」

「申せ」

威圧的に言い放つオーディン

「・・・オーディン様が・・・アフロディーテ様を殺した・・・と」

「・・・詩琉よ」

「はっ!!」

「その話、お前は信じるというのか?」

「い、いえ!信じるはずありません」

「ならばいいだろう。そんなものはヴァン神族の低俗な輩が流した話に決まっている」

「それに私があれだけ愛でていたアフロディーテをなぜ殺す必要がある」

「そ、それは・・・」

「少々疲れているようだな詩琉よ。少し休むがいい」

「・・・はい。」

一礼し、宮殿を後にする詩琉

詩琉が去ったすぐ後に

「フレイよ」

オーディンが誰もいない空間でそう発する

「はい、オーディン様」

空間にひずみが発生し、そこからフレイが姿を現す

「お呼びでしょうか?オーディン様」

「詩琉から目を離すな。常時監視の目をおいておけ」

「はっ。仰せのままに・・・」

そう言い残し、フレイが姿を消す

(・・・不死者王・・・貴様どこまで知っている・・・)

知識の椅子に座しながら、オーディンは考えをめぐらせるのであった